空耳日記

生きるための文字起こし

期待をしない、ということ

昔の上司に薦められた本を、最近になって読み返してみた。

 

群れない生き方 (ソフトバンク文庫)

群れない生き方 (ソフトバンク文庫)

  • 作者:桜井 章一
  • 発売日: 2012/09/19
  • メディア: 文庫
 

 

安易に他者と群れるな。人は変わるものだから、他者に期待したり信用したりしなければ、「裏切られる」こともない。

 

人は弱いものだから、孤独を恐れ、何かしら人とのつながりを求めようとする。ときには、他人の悪口や不満ばかりをかすがいにして。それ以外にめぼしい話題もないものだから。

私は、そういう浅薄な人間関係に疲弊した。そして、そうした彼らの浅ましい会話をシャットアウトしきれない環境の中で、ただただ苛立ちを募らせ、心身をすり減らした。かつて信頼していた同僚の、きわめて自己本位的なふるまいや仕事のあり方がコロナをきっかけに露呈してからというもの、信頼は徐々に失望に変わり、かつては温かだったはずのふたりの関係の冷たさを感じては、虚しさが心の中に蓄積していくばかりであった。

 

こうしたことが私にとってはトドメとなってしまったらしい。まずは自分の心を守るため、当面の間、そうした環境から物理的に距離を置くことを選んだ。

だが、人の本質も、変わりゆくものも、変えることはできない。変えられるのは自分のことだけである。

1年前の今頃、相変わらず愚鈍な後輩に苛立つ彼女に対して、期待を捨てたら楽になると言った自分の言葉を、半年くらい前から、改めて自分自身に掛け続けてやればよかったのかもしれない。

 

ちなみに、冒頭の本を最初に手に取ったのは今から10年近く前のこと。20代半ばだった私にはこの本の内容はあまり響かず、少し読んでそっと本棚に戻し、それっきりでいた。その頃には向き合えなかった生き辛さに改めて直面している今、改めてこの本を開いてみると、まるで心に沁みるようであった。

思えば、この本を薦めてくれた上司も、かつて仕事終わりに2時間も3時間も、話に付き合ってくれた。社会に出て、要領が掴めず苦労したこと。うわべだけの人間ではなく、本音で付き合える人間を大事にしているということ。彼もまた、私と似たような苦しみを味わってきたのかもしれないと、今更ながら考えている。